人材育成で本当に大切なこと 自立を育てる指導の軸
💡人材育成で本当に大切なこと
私は20年以上、現場で子どもたちを見てきました。そこで痛感しているのは、人材育成は技術指導だけでは終わらないということです。どんな人に育ってほしいのか。そのゴールが曖昧なままでは、指導は必ずぶれます。
いまの時代は、勝てるかどうか、上手いかどうかだけでは足りません。SNSや周囲との比較で、子どもたちの自己評価は揺れやすくなっています。実際、APAの調査ではInstagramを過度に使う人ほど自己肯定感が平均15%低下したとされ、WHOもコロナ以降、うつや不安障害が約25%増えたと報告しています。だからこそ、私はなおさら「人としてどう育つか」を先に置きたいのです。
執筆者紹介
指導歴20年以上、1,000人以上の子どもたちと向き合ってきた現場の視点から、教育・子育て・スポーツの『本質』を発信しています。きれいごとではない現場の事実を大切にしています。
🌱育てる側に必要なのは、まずゴールを決めること
人を育てるとき、最初に決めるべきなのは方法ではありません。どんな人に育ってほしいかです。サッカーが上手いだけでいいのか、人間性まで含めて育てるのか。この軸があるだけで、日々の声かけも、叱り方も、褒め方も変わります。
私が現場で見てきたのは、ゴールがない指導ほど子どもを迷わせるという事実です。今日は褒める、明日は叱る、昨日は許したのに今日はダメ。これでは子どもは何を信じて動けばいいのか分かりません。指導者の役割は、気分で場を回すことではなく、育成の軸を守り切ることです。
言ったことに責任を持つ
私は、指導者が自分の発言に責任を持つことを何より大切にしています。昨日と言うことが違うなら、そのときはきちんと謝るべきです。指導者も人間ですから、学びながら変わることはあります。ただし、変わるなら変わるで筋を通す必要があります。
ここを曖昧にすると、子どもたちは言葉を信じなくなります。信頼は才能ではなく、日々の一貫性で積み上がるものです。だから私は、自分の理論がすべてだとは思いません。むしろ、学び続けることをやめた瞬間に、指導者としての成長は止まると考えています。
⚽人材育成のゴールは自立である
私が最終的に目指しているのは、自立した選手です。自分で考え、自分で行動し、自分で修正できること。これができる子は、練習の場だけでなく、家でも学校でも伸びます。反対に、言われたことだけをやる子は、環境が変わった瞬間に止まってしまいます。
自立は、口で言うほど簡単ではありません。子どもに「考えなさい」と言えば考えるわけではないからです。だから私は、目標設定を一緒にやります。今の実力より少し上、でも手が届かないほど遠くはない。そのギリギリのラインを見極めることが、現場の指導者に求められる仕事だと思っています。
この考え方は、近年注目されている自己受容の研究ともつながります。Kristen Neffの研究では、自己肯定感と自己受容は別軸で、弱さも含めて受け入れられる人ほど不安やうつの再発リスクが低いとされています。私は現場で、まさにそれを感じます。できない自分を否定するのではなく、できるところから積み上げる子が、結局は強いのです。
✨成功体験が、自立の土台になる
自立を育てるうえで欠かせないのが成功体験です。最初から高い目標を置きすぎると、子どもは折れます。逆に簡単すぎても成長しません。だから私は、毎日5分でもボールに触るところから始めることを大事にしています。
5分でいい。そこから10分に伸びるかもしれないし、20分になるかもしれない。重要なのは、小さく成功して、続けることです。8週間のMBSRプログラムで不安や抑うつスコアが20〜25%減少したというメタ分析がありますが、私はその背景にあるのも「続けられた小さな実践」だと見ています。
子どもは、できた経験があるから次に進めます。できた記憶がないまま「もっとやれ」と言われ続けると、自信ではなく苦しさだけが残ります。現場で大事なのは、根性論を押しつけることではありません。達成できる階段を一段ずつ作ることです。
🏃目標設定は、コーチが最後まで調整する
私は、目標は立てたら終わりではないと思っています。むしろ立てたあとに、どこが高すぎるのか、どこが低すぎるのかを見直し続けることが本番です。目標がずれていれば、子どもは「自分がダメだ」と感じてしまうからです。
実際には、目標が高すぎて失敗する子もいれば、低すぎて成長が止まる子もいます。だからこそコーチには、チーム全体の物差しが必要です。学年ごとに、今どのレベルまで到達すれば次へ進めるのか。そこを見極める目がなければ、育成は感覚だけになってしまいます。
私はここで、勝利至上主義に寄りかかりすぎないことも大切だと感じています。勝つこと自体は悪くありません。ただ、本当に見るべきは、その勝ちの先に子どもが何を学ぶかです。勝ったあとにどう振る舞うか。負けたあとにどう立て直すか。その力こそ、将来の壁を越える土台になります。
💡現場で見えてきた、プロに必要な壁の超え方
私は、子どもたちに早いうちからプロの壁を知らせることが重要だと考えています。プロになると、技術だけでは通用しません。人間関係、責任、継続力、修正力。そこで差がつきます。だからこそ、今のうちから壁を知り、越え方を覚える必要があります。
ここで役立つのが、メンタルケアの考え方です。Pew Research Centerの調査では、Gen Zの約60%が瞑想やセルフコンパッション系アプリを使っているとされます。デジタルの時代に、自分を整える習慣が求められている証拠です。私はこの流れを、甘やかしではなく、自分を立て直す技術として受け止めています。
現場での育成は、単に励ますことではありません。厳しさと安心の両方が必要です。安心だけでは伸びず、厳しさだけでは折れます。その間を見極めるのが、指導者の仕事です。
🌱私が大切にしている三つの視点
一つ目は、育てたい人物像を明確にすること。二つ目は、子どもが自分で考えられるように目標を調整すること。三つ目は、小さな成功を積ませ続けることです。この三つがそろうと、子どもは少しずつ自立していきます。
私は、これを特別な方法だとは思っていません。むしろ、現場で何百回も失敗して、何百回も向き合った末に残った、ごく当たり前の結論です。派手な育成法より、地味でも続く育成のほうが、長い目で見れば確実に力になります。
子どもを育てるとは、コントロールすることではありません。本人が自分の足で立てるように、環境と課題を整えることです。そこを見失わなければ、育成は必ず前に進みます。
⚽まとめ:人材育成で本当に大切なこと
- 人材育成の出発点は、どんな人に育ってほしいかという明確なゴールを持つことです。
- 自立を育てるには、子どもに合った目標設定と小さな成功体験の積み重ねが欠かせません。
- 勝ち負けだけでなく、将来の壁を越える力まで見据えた指導が、本当の育成だと私は考えています。
子どもは、正しい環境があれば必ず伸びます。焦らず、ぶれず、目の前の一歩を積み重ねていきましょう。私も現場で、これからも本質を見失わずに向き合い続けます。